1.救命救急の現場で学んだこと |
救命救急に始まり、救命救急に終わる。27年前の救命救急の現場で必死で患者さんの命を救うため、不眠不休の毎日でした。そこから得たものは、多くの患者さんには前兆があり、もし、その直後受診していれば救命できたのに‥という後悔だけでした。多くの癌の患者さんも来院するのがあまりにも遅すぎるという事実でした。ここにいては患者さんの不幸を待ちわびることになる。病気という『実』が熟すまで病院で待ち続けることになる。そう思って病気を早期に見つけ、さらには病気を予測できないか。その方法を模索し続けました。
|
2.CEAという癌細胞が作り出す癌マーカー(CEA基準値
5.0ng/mlng/ml以下 ) |
27年前自分が信じていた血液検査の中にはCEAという癌マーカーがあります。癌になるとその癌細胞が作りだすタンパク質のことです。癌になってしまってくる方のCEAはかなり高値でした。この癌マーカーはいつ0で、いつから0.1になり、なぜ100を超えるまで気付かなかったのか。そんな素朴な疑問を抱いて、今度は健康な人の癌マーカーをチェックしてみました。つまり3、4歳の小児から老人に至るまでの癌はなさそうだと思われる方々のデータをとり続けました。そしてその経時的変化に着目し、6ヶ月から1年ごとに採血し続け、その増加率を調べ、癌を超早期に発見しようと考えました。
|
CEAとは?
1.食道癌 2.胃癌 3.肝癌 4.胆のう胆管癌 5.膵癌 6.大腸癌 7.肺癌 8.乳癌 9.子宮癌 10.腎癌などの疾患でガン細胞が作り出すタンパク質のこと。癌がすでに存在しているかどうかスクリーニングできる血液検査。
|
|
つまり6ヶ月間でその変化率が2倍以上の時、徹底して精密検査をしました。その結果画像診断を用いて多くの癌を発見できましたが、早期に発見できたとしても、その癌の大きさはおよそ5ミリ程度で、がん細胞の数で言うと、なんと1億個から10億個にもなります。画像診断(PET、CT、MRI、エコー等)はあくまで人間の目でみるわけですから、どんなに頑張ってもこれより小さいものは診断が難しいという現実があります。このように血液癌マーカーの限界を感じていた頃に、遺伝子診断に出会いました。
|
|
しかし遺伝子診断ですと、遺伝子のキズを血液検査で発見でき、癌という固まりにならないうちに、つまり、癌になりかかっている自分の身体のミクロな変化をとらえられるわけです。つまり『自分は何年後○○癌になりそうだ‥‥』というリスク予測可能な時代になりつつあるということです。
|
センター南クリニック院長・ゲノムドクター 武田 茂 |